‭ 酢酸菌の基礎知識|期待できる効果や‬ ‭ にごり酢の特徴、おすすめの使い方を 紹介‬ ‬ ‭ ‭

最近じわじわとメディアでも注目を集めている「酢酸菌」。
しかし、 「名前は聞いたことがあるけれど、具体的にはよく知らない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、酢酸菌とは何かを解説し、酢酸菌を含む食品のひとつ「にごり酢」の魅力や活用方法をご紹介します。

 

酢酸菌とは?

酢酸菌とは、アルコールを酢酸に変える「酢酸発酵」を行う微生物のこと。自然界では花や果物にくっついていたり、空気中にただよっていたりと、身近な場所に存在しています。この酢酸菌が活躍するのが、お酢の製造です。
お酢の強い酸味と独特の香りは、酢酸菌が作り出す酢酸に由来しています。古くから人々は酢酸菌の性質を利用して、米酢や果実酢など、いろいろなお酢を作ってきました。
最近は、酢酸菌や酢酸の特性に改めて注目が集まり、さまざまな研究が進められています。

 

酢酸菌に期待できる効果

酢酸菌が作り出す酢酸は、健康の維持に関わることが研究により明らかになりつつあります。さらに、酢酸菌そのものと健康の関係についても研究が進んでいます。
酢酸菌についての研究のなかでも注目されているのが、免疫機能との関わりです。酢酸菌は、花粉症やホコリなどが引き起こすアレルギー症状を和らげる可能性があります。
そもそもアレルギーとは、免疫機能の過剰反応が原因で起こるものです。通常、免疫は体の中へ侵入した病原菌やウイルスを排除するために働きます。
しかし、免疫細胞がうまく働かなくなると、花粉やホコリなどの本来無害なものにまで過剰に反応することがあります。その結果、鼻水や目のかゆみ、せきなどのつらいアレルギー症状が現れるのです。
酢酸菌は免疫細胞の働きを調整する可能性があると考えられており、今も研究が進められています。
「花粉症の原因を知って、自分に合った対策を!季節のムズムズを改善する方法は酢酸菌にあり!?」

 

酢酸菌の入った食べ物は?

酢酸菌は主に発酵食品に含まれており、代表的な食べ物には次のようなものがあります。

●にごり酢
●ナタデココ
●コンブチャ(紅茶キノコ)

お酢は原料や製法の違いによりさまざまに分類できますが、どれも製造には酢酸菌が欠かせません。

ただし、市販の透明なお酢には酢酸菌がほとんど含まれていません。酢酸菌が入っているお酢は濁って見えるため、製造したお酢をろ過し、酢酸菌を取り除いてから出荷しているのです。
したがって、お酢で酢酸菌を摂るなら、ろ過をしていない「にごり酢」を利用する必要があります。

また、弾力のある食感で人気の「ナタデココ」も、酢酸菌の力によって作られる発酵食品のひとつです。
ココナッツの実の中にあるココナッツ水に、砂糖や酢酸菌の仲間である「ナタ菌」を加えて発酵させます。
すると、表面に膜が張るように乳白色のかたまりが形成されます。それをサイコロ状にカットしたものがナタデココです。

「コンブチャ」とは、海藻の昆布を使ったお茶ではなく、健康志向の方に人気がある飲み物のこと。
紅茶に酢酸菌と酵母、砂糖を加えて発酵させて作ります。日本ではかつて紅茶キノコの名前でブームになりましたが、現在は海外でコンブチャと呼ばれて親しまれています。

 

にごり酢の特徴と魅力

 

にごり酢の製造方法

市販のお酢は人工的に発酵を進め、短期間で生産されますが、にごり酢の多くは昔ながらの製法で、時間をかけて丁寧に作られます。

米から作られるにごり酢の場合、まずは蒸し米と米麹、水、酵母を合わせ、お酒のもとになる「もろみ」を作ります。ここに加えるのが酢酸菌です。
酢酸菌は液体の表面に膜を作り、発酵によってもろみに含まれるアルコールを酢酸へ変えていきます。

この伝統的な製法は、液体に穏やかな対流を作り出し、ゆっくりと時間をかけて発酵を進めるため「静置発酵」と呼ばれています。

発酵を終えた液体は、そのまま長期間の熟成へ。数ヶ月から、場合によっては数年をかけて熟成され、にごり酢が完成します。
一般的なお酢は瓶に詰める前にろ過をして、酢酸菌を取り除く一方で、にごり酢はろ過を行いません。
そのため、見た目にはにごりがありますが、酢酸菌などの微生物、お酢本来の風味やうまみが残る仕上がりになります。

 

原材料によるにごり酢の違い

にごり酢は、使用する原材料により見た目や風味に違いが現れます。たとえば、同じ米を使ったにごり酢でも、精白米と玄米では違った特徴が見られます。

精白米から作られたにごり酢は口当たりがまろやかで、色合いは薄めです。それに対して、玄米を使ったにごり酢は奥深い風味やコクがあり、濃い色をしています。
玄米は米の表面にぬかなどが残っているため、精白米を原料としたにごり酢よりも複雑な味わいになる傾向があります。

また、りんごなどの果物を使用したにごり酢は、フルーティーな風味が特徴です。このように多彩な個性を持つにごり酢は、自分の好みや用途に合わせて選ぶ楽しみがあります。
いろいろなにごり酢を試してお気に入りを探したり、いくつかのにごり酢を料理によって使い分けたりするのもおすすめです。

 

にごり酢の魅力

一般的なお酢の効果はそのままに、さらに酢酸菌をたっぷり含むことがにごり酢の魅力です。

研究では、お酢には次のような健康に関する機能があると報告されています。

●脂質代謝のサポート
●血圧の健康維持
●血糖値の緩やかな上昇
●腸内環境の改善支援
●疲労感の軽減

また、お酢の酸味には、唾液や胃液の分泌を促し、食欲を増進させる働きが期待できます。
鶏の手羽元やしじみなどを煮込む際にお酢を加えると、骨や殻からカルシウムが溶け出るため、カルシウムの摂取量アップに役立ちます。
塩味を引き立て、薄味の物足りなさを補うことで、減塩の手助けをすることもお酢の効果のひとつです。

さらに、ろ過をしないにごり酢には、酢酸菌をはじめとする微生物や、うまみのもととなるアミノ酸などの成分がまるごと含まれています。
伝統的な製法と長期熟成により育まれた芳醇な香りや奥深い風味も、にごり酢ならではの特徴です。
にごり酢は、健やかな毎日を支えながら、食生活を豊かに彩る頼もしい調味料といえます。

 

にごり酢をおいしく摂る方法

 

にごり酢は、毎日の暮らしに手軽に取り入れられます。ただし、酢酸菌をしっかり摂りたい場合は、使い方に工夫が必要です。
酢酸菌は熱に弱いため、生きたまま取り入れるなら、ドリンクやドレッシング、和え物などの加熱しないメニューがおすすめです。

豊かな風味が魅力のにごり酢は、ドリンクにしてもおいしく楽しめます。ただし、酸味による胃やのどへの負担を和らげるため、必ず5倍以上に希釈してください。
にごり酢に合わせるのは水や炭酸水、フルーツジュース、牛乳、豆乳、甘酒など、好みのものでかまいません。

材料を工夫するとラッシーやスムージーも作れます。お気に入りのレシピを見つけて、にごり酢ドリンクを毎日の習慣にしてみましょう。

にごり酢は料理でも大活躍します。オリーブオイルや塩、こしょうと混ぜ合わせるだけで、野菜のおいしさが一層引き立つ「にごり酢ドレッシング」が作れます。
マリネや酢の物、漬物にもぴったりで、ストックしておくと毎日の食卓で重宝するでしょう。

加熱する炒め物や煮物などに使う場合は、調理の最後に加えることで酢酸菌の損失を抑えられます。さらに酸味とコクがプラスされ、いつもの料理がワンランクアップの味わいに。
ぜひ、にごり酢をさまざまな料理に加えて楽しんでください。

《おすすめレシピ》
◾️ラッシー(ヨーグルトドリンク)
◾️ベリーヨーグルトスムージー
◾️きのこのマリネ

 

毎日の暮らしに酢酸菌を取り入れるならにごり酢がおすすめ

一般的なお酢に期待できる機能をもちながら、酢酸菌や栄養成分をまるごと摂取できることが、にごり酢の大きな魅力です。炭酸水やジュースで割るだけで作れる簡単ドリンクから、ドレッシングやマリネなどの料理まで、幅広いアレンジも楽しめます。

さらに、昔ながらの製法で生み出される豊かな香りと風味が、日々の食卓を彩ります。ぜひにごり酢を暮らしに取り入れて、おいしく健やかな毎日を実現させましょう。

 

【参考文献】
農林水産省 にっぽん伝統食図鑑「にっぽんの発酵食品」
一般社団法人日本アレルギー学会「アレルギーについて」
教えて!慎太郎先生「酢酸菌とは(さくさんきん)の効果と副作用」
小泉幸道. 食酢の多彩な効用. 日本調理科学会誌. 2021, Vol.54, No.3. p.153~156.
全国食酢協会中央会「食酢のやさしいガイドブック」